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REC.006 chapter.2「「音育」が「食育」と同じようにあるべき。」

2016年11月29日開催

season 5


REC.006 chapter.2
「音育」が「食育」と同じようにあるべき。

― アナログ盤を爆音で聴く会のイベントについて、学生たちからもいくつか質問がありました。爆音にこだわったのはどうしてですか?

平山:新宿のディスクユニオンは中古アナログ盤でJロックや歌謡曲とかも売っているので、アナログを聴く、しかも爆音で聴くイベントをやろうということになり、1回目がユーミン、2回目が山下達郎、3回目が新譜をアナログで出したユニコーン。4回目はマイケル・ジャクソンと山下達郎の聴き比べをやりました。アナログを爆音で聴いたあとにCDをかけたりもするのでめちゃくちゃリアリティがありましたよ。CDは4Kのように精密な平面の感じで、アナログは立体感のある別の意味の3Dなんだよね。完全に音の前後があり、そういう音像のつくり方をしてるので、それはヘッドフォンじゃなくてスピーカーで聴いた方がわかりやすいし、今改めて聴くともっと良くわかると思う。
実はこうして体感する「音育」というものが「食育」と同じようにあるべきだと考えていて、その一環として爆音試聴会をやっています。今のところ40代、50代のお客さんが多いので、昔こうやって聴いていたということを思い出してもらっているかな。まれに20代の若者とかいるけど、音の立体感にびっくりしてるよね。

― 今日の学生が聴いたらどう感じるのでしょうね?

平山:ぜひ聴かせてみたい。ここの視聴覚室でもできるんじゃないかな。体感してもらうと、あの溝のなかでいったい何が起っているんだろうと考える人もいるよね。例えば全盛時のカーペンターズをかけた後に、初期のユーミンをかけると当時の音楽づくりの深い意味がわかったりするんだよね。

― 今日は、音楽評論家の基礎知識というテーマでお話を伺いましたが、例えばミュージシャンのインタビューには何かコツみたいなものはありますか? 質問をたくさん用意していくとか、知ったか振りしないとか……

平山:それは基本だね。その意味で音楽を伝えるインタビューで言うと、僕がやるのは最初に自分の感想を言う。「あなたの音を聴いて私はこう思っています」と。まずそうしないと、相手がどう思っているかわからない人に対して、彼らも答えようがないじゃない。そこから始めないと失礼だし、話にならないよね。その人たちの音楽を聴くのは当然なんだけど、まれに聴いてないインタビュアーもいるから(笑)。

― 平山さんが今後なさりたいことは何ですか?

平山:僕は俳句が趣味だけど、俳句は江戸時代のロックだったんだよね。もの凄くぶっちゃけている世界。わかりやすい例だと芭蕉の「蛙飛びこむ〜」。蛙って雅の世界だと声しか詠まれないんだけど、それまで鳴き声しか詠まれなかったのに、芭蕉は肉体を持っている蛙が池に飛びこむことを詠んだ。あれには江戸時代の人はみんな有り得ないってびっくりしたと思うよ。それはブルーハーツが「ドブネズミみたいに美しくなりたい」と歌っているのと同じこと。芭蕉の俳句は凄く革新的な文学だったんだよ。僕が仲良くしている俳人の北大路翼君という人がいるんだけど、彼の俳句はロックでパンク。例を出すと「倒れても 首振っている 扇風機」。これは倒れても絶対に負けないと言ってて、すごくパンクだと思う。「木刀で 入れるスイッチ 扇風機」なんて乱暴だけど力強い。一番好きなのは「電柱に 嘔吐三寒 四温かな」。ゲロを吐きながらも春が来たなと思っているんだよ。翼くんはこうした俳句で賞を獲った。僕はロックに通じる感覚を持った彼と一緒になにかやりたいなと思っています。
※北大路翼さんは、句集『天使の涎』(邑書林)を2015年4月19日に出版しています。

― 本日は誠にありがとうございました。(次回は(株)ワタナベエンターテインメント取締役 第二マネージメント本部担当役員 吉田雄生さんです。)

平山雄一さん

REC.006 平山雄一
音楽評論家

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