REC.011 chapter.3「愚直さと妄想癖」
season 2
REC.011 chapter.3
愚直さと妄想癖
―先ほど、リスナーへのプレゼント発送を例に、どんな仕事でも楽しみ、創意工夫をすることでプロデュース力がついていくというお話がありましたが、学生はそのために、今どんな勉強をすればいいでしょうか?
松尾:今日、僕は講義の前に、八王子の歴史や八王子出身の著名人を調べてきました。もちろん松任谷由実さんは有名ですけど、羽生善治さんは、生まれは所沢だけど八王子に住んでいたとか、ファンキー・モンキー・ベイビーズの曲には八王子が舞台の歌がたくさんあるとか、北島三郎さんが住んでいるとか。やはり面白がろうと思ってこないと、楽しめない。来るときに八王子ラーメンを食べたのもその一環です(笑)。何か持って帰ろう、何か企画を生んでやるぞ、と取り組めば、八王子ラーメンひとつでも、刻み玉ねぎがのっている発見を面白がれる。今日のことがご当地タウン企画みたいなプロジェクトを生み出す可能性もあるし、そういう楽しみ方をすればいいんじゃないかという、これは発想のヒントですね。
―下準備のしっかりしたリサーチがあると取材が楽しくなりますよね。
松尾:こういったことを愚直に積み重ねるだけでも、その人の力になっていくと僕は思います。決して難しいことではないですよ。例えば、ペットボトルって面白いと思うとすると、日本中、世界中のペットボトルを集めて全部並べ、カテゴリー別に分けてみる。これがいっぱい並んでいたら面白いというセンスから、ミュージアムやギャラリーができるかもしれないし、ちょっとした本は書けるかもしれない。
―愚直さは大事ですよね。でもそればかりではないですよね?
松尾:特にラジオのことでいうと、音声メディアで情報量が少ない。ですから、制作者はリスナーと妄想癖みたいなものを共有して、リスナーに想像させるわけです。この曲を流したことで、どういう気持ちになるのか、とか。例えば、東京工科大学のキャンパスの風景なら、どんなSFっぽい曲を流せば映画「ゼロ・グラビティ」みたいな世界になるのか。こういった妄想癖が企画にもなっていきます。
―妄想癖はアイデアを生み出す一番のガソリンかもしれませんね。
松尾:そうかもしれませんが、僕は最初からアイデアを生み出す企画力がなくてもいいんだ、ということを強調したいんです。それよりも、愚直に積み重ねることが本当に大事です。
―東京工科大学メディア学部の学生が、J-WAVEでアルバイトをさせていただいて、リスナーから「楽しかった」という声をもらったときに達成感があると話していました。
松尾:これは僕もまったく一緒ですね。元気づけられたとか、良い音楽を教えてくれてありがとうといった、リスナーのいい反響が一番の達成感ですね。ラジオはたぶん、それをリアルタイムに受け取れるんですよ。よかった!とか、最高!と言ってもらえる、それは嬉しいです。
―ありがとうございました。
chapter.3 愚直さと妄想癖
REC.011 松尾 健司さん
(株)J-WAVE編成局次長兼編成部長
- REC.011 chapter 1-3 -
- chapter.1 一つのことを深堀りする大切さ
- chapter.2 好きな音楽を体系立てて聴いてみる
- chapter.3 愚直さと妄想癖