1高機能性化粧品への挑戦
美しさの追求から人々の健康を支える化粧品へ
洋の東西を問わず、昔から化粧品は視覚的、そして色彩的に女性の美を支えてきました。
女性の美の歴史は化粧品の歴史と言っても過言ではありません。
しかし近年、皮膚の健康が人間の健康を左右する可能性が指摘され、このような観点から、より安全性の高い化粧品素材や、女性のみならず男性に対するスキンケアの重要性が注目を集めています。
また、高齢者に対するメイクアップの効果についても検討され、現代社会において、化粧品はクオリティ・オブ・ライフの向上に欠かせないツールとして重要な役割を演じています。
化粧品の新たな可能性を目指して
私たちは安全性の追求、美白、抗老化、発毛と育毛といったキーワードに対して、化学的および生物学的なアプローチでこれらのメカニズムを解明し、新しい機能を持った化粧品素材の開発を目指しています。
そして、「より安心な」、「より人を美しく」、「より人を若々しく」そして「より人を健康にする」化粧品の開発につながる研究に取り組んでいます。
天然素材とメカニズムに基づいた薬用化粧品の開発
美しく健康な毛髪や肌を保つためには、また脱毛やアトピー性皮膚炎の解決のためには、どのような化粧品・医薬品が良いのか?このような問題に細胞制御の研究から迫り、メカニズムを明らかにします。
そしてそのメカニズムにあった天然素材を探し出して、薬用化粧品成分として開発します。
毛髪の研究
私たちが見出した毛髪成長の共通原理を細胞に適用して、頭髪・睫毛などの育毛や体毛などの抑毛作用をもつ薬用化粧品・医薬品成分を創出します。
肌の研究
皮膚機能に重要な遺伝子の機能や個人差に迫り、アトピー性皮膚炎・ニキビ・創傷などの解決に適した薬用化粧品・医薬品成分を創出します。
高機能育毛および抗白髪薬剤の開発
私たちの研究室は毛髪や白髪が生える仕組みを解明しようとしています。そのため、ヒト毛髪の細胞を培養し、細胞間同士の情報伝達や遺伝子発現を調べたりしています。また、iPS細胞などを使って幹細胞から毛髪細胞へ分化していく仕組みを調べるとともに、毛髪幹細胞の維持のために必要な因子を探索しています。その他、くせ毛ができる仕組みや、頭皮と毛髪性状の関係、毛髪ダメージについても研究を進めています。
肌に優しい新規有機無機複合材料の開発
環境悪化やストレスの増大、そして高齢化社会への移行に伴って、肌のバリア能が低下し、化粧品自体を使用しにくい人も増えています。我々は、身近な天然素材と最先端のナノテクノロジーを組み合わせることで、このような時代に適した安全安心な化粧品原料の開発に取り組んでいます。
「メソポーラスシリカ」は、シリカゲルと同じ化学組成の安全性の高い粉体で、ナノサイズ(10-9m)の非常に均一な細孔をもっています。この粉体のナノ細孔に、植物から取り出した不安定な有機分子を導入すると、高機能な化粧品原料として使用できるようになります。
例えば、柑橘類のシークワーサーから取り出したフラボノイドを導入すると、透明で感触の良い紫外線吸収粉体となり、サンスクリーン乳液に使用できます。ブドウの皮から取り出したアントシアニン色素が入ると、赤や青の鮮やかな着色剤になり、ほお紅や口紅に使用できます。
これらの技術で、敏感肌やトラブル肌の状態の人でも安心して使用できる化粧品を目指しています。
肌老化のメカニズムの解明とその克服に向けた取り組み
皮膚・毛髪科学と美容素材の機能性を分子生物学あるいは細胞生物学的な観点から研究しています。また、最先端技術を用いた乳化製剤(化粧品・医薬部外品)、美容食品の研究も行っています。
光老化のメカニズムの解明と新規光老化防御システムの確立
光老化のメカニズムの解明と新規光老化防御システムの確立
太陽光線の繰り返し皮膚への曝露は、年齢に伴う老化を加速することが知られている。その加速作用は紫外線によるものと考えられてきたが、最近ではブルーライトや近赤外線もその作用に関与している可能性が示されている。当研究室では太陽光線の各波長の皮膚老化に及ぼす作用をヒト皮膚モデルや培養細胞を用いて明らかにし、その防御システムの確立について研究している。
肌の防御機能を促進する化合物の検索
「人体最大の臓器」とも言われる皮膚は外部からの異物の侵入や、過剰な体内からの水分の蒸散を防ぎ、人体を保護しています.この皮膚のバリア機能を担っているものの一つにセラミドバリアがあります。私たちの研究室ではこのセラミドバリアの破綻と修復のメカニズムに注目し、これを増加・回復させる化合物の検索を行っています。