2020年メディア学部長メッセージ
「AI時代に強いメディア学部」柿本正憲 教授
人工知能(AI)の技術が急速に進歩し、第3次AIブームと騒がれて数年が経ちました。この間、行き過ぎた未来予測が人々をあおることもありましたが、次第に冷静な議論がされるようになりました。AIは一時的なブームではなく、実社会に組み込まれていく汎用の技術であることは間違いないようです。
よく聞く話として、AI普及によって人間の仕事が奪われるという説があります。ある種の知的職業についてはその通りです。知識の単純な組み合わせを使う定型的な作業で結果を出す職種はAIに置き換えられます。例えば、株価や為替の変動を利用し、安いときに買って高いときに売る「投機」という作業を行う金融トレーダーの仕事は、コンピュータプログラムに置き換えられました。
第3次AIブームでは、「定型的」ではない作業プロセスの仕事でも正解と言える結果をコンピュータが出せるようになったことがポイントです。音声翻訳、機械翻訳が良い例です。プロセスはわからないけど問題設定が具体的かつ明確で、正解かどうかの(人による)判定も比較的簡単な仕事はAIで置き換えられます。
問題設定が明確でない仕事はAIにはできません。問題点を整理し具体化する作業が含まれる仕事、広い意味での問題発見の仕事はAIには置き換えられません。そういう職業(例えば営業、経営、研究開発などのほか、客からいろいろな話を聞くことが重要な仕事)に就くことはAI時代の重要ポイントの一つです。
実はもう一つ、AIで置き換えられない種類の職業があります。AIを管理したり、AIに学習させたり、種々の難しい設定を行ったりする仕事です。金融トレーダーの例でもそのような仕事をする少数の人はプロとして残っています。
人工知能と聞くと何か人間っぽいものを想起させます。利用者に見える部分をいくら取り繕っても、中身は単なるコンピュータプログラムです。その管理、設定、訓練をする職種はなくなるどころか、AI普及によって増えていきます。
そのような仕事に就ける人の必要条件は、情報技術(IT)の活用に精通していることです。
東京工科大学メディア学部は、コンテンツ制作のイメージがだいぶ強いようですし、事実その分野「メディアコンテンツコース」の教育研究は充実しています。そのほかにも「メディア技術コース」「メディア社会コース」があり、たいへん広範囲な専門分野から学生が自身の専門を見つけ極めていくことができます。
いずれの分野に進むにしても、共通するのはITを駆使し活用する能力が確実に加わるということです。与えられた課題に対してデジタル技術を活用することによって答えを出す訓練を行います。メディア学部の講義や演習では、PCで専門のソフトを道具として使う授業が多数あります。
使っているソフトの種類を全科目の全テーマで調べたところ、全部で110種類ものツールソフトを使っていました。そのうち51種類は2科目(2テーマ)以上の授業で使われています。マイクロソフトOffice(Word, ExcelやPowerPointなど)はあまりにも当たり前なので除いた数字です。採用科目数の多いベスト10はUnity, Photoshop, AfterEffects, Audacity, Premier, Maya, Illustrator, Python, VisualStudio, TeraTermです。
いろいろな優れたソフトを使い真剣に課題に取り組むことによって、ITを活用する「勘どころ」は自然に身につきます。メディア学部でしっかり学べばAI普及によって需要が高まる職種に就けます。「専門分野×IT活用技術」を修得する、AI時代にはうってつけの学部です。