1最先端の生命科学で医療に
貢献する
生命科学とバイオテクノロジーの発展が支える健康な暮らし
大きさわずか0.001 mmの大腸菌の中で起こっている生体反応を全て人工的に再現しようとすると、一つのプラント(工場)が建つほどだと言われています。ましてヒトの体の中では、さらに極めて複雑な遺伝や代謝反応が行われており、その全貌は未だ解明できていません。
このような生命の仕組みを明らかにしようとする生命科学の研究は、古くから人々の興味の対象であり、また病気から身を守るためのごく自然で必要な営みでもありました。
1953年の「DNA二重らせん構造」モデルの提唱、2003年のヒトゲノム完全解読を経て、生命科学とそれを支えるバイオテクノロジーは今なおますます飛躍的な発展を続けています。そして得られた膨大な知見は、人々の健康な暮らしを支えるのに大きく役立っています。
最新の知見と技術を生かして医療や健康への貢献をめざす
応用生物学部の「生命科学分野」では、まだまだ未知の領域が多い生命科学を理解し、さらに最先端のバイオテクノロジーを駆使して、私たちの医療と健康に貢献するための研究を行っています。
具体的には、ゲノム、遺伝子、タンパク質、細胞、免疫などの最新の知見を基盤とし、最先端の遺伝子・タンパク質工学、ナノテクノロジー、バイオセンシング技術などを駆使して、がんなどの診断や治療、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、ヘルスケアなどに役立てます。
疾病の原因・診断・治療を研究し医療に貢献する!
DNAや酵素、抗体などの生体分子は特定の相手だけを見分ける優れた分子認識能を持っています。私たちはこの機能を最大限に利用し、疾病の指標となる成分の検出を目指します。具体的には、分子認識能を有する特殊なDNA鎖を用いて疾病の診断を、また様々な抗体を固定化した抗体チップを用いて高感度検出を試み、早期診断を目指します。また、 疾患に関連するタンパク質や遺伝子の探索を行っています。細胞の中には、役割が明らかとなっていない機能未知のタンパク質や遺伝子が数多く存在します。私たちの研究室ではこれらの機能と疾患との関連をひも解くことで、治療薬の効果を予測する新たな疾病指標成分の特定や効果的な治療戦略の開発を目指します。
分子レベル・ナノレベルの視点から、医療に役立つ新技術を開発する!
ナノレベルでの計測・操作技術をベースに生体分子の分子レベルでの機能評価や解析法の研究や細胞工学への応用研究を行っています。研究例としては、①原子間力顕微鏡(AFM) を使った、DNA分子に対する抗がん剤作用の分子レベルでの評価、②フェムト秒レーザーという特殊なレーザーを使った生体分子操作用マイクロマシンの創成、③3Dプリンターを用いる3次元細胞組織形成技術の研究、④細胞シート移送デバイスの開発などがあり、このほかにも多くの研究テーマに取り組んでいます。
健康を測る、創る。病気を測る、防ぐ。
生化学分析を中心に、次世代ヘルスケア産業に貢献するための研究開発を行っています。具体的には、①連続測定型血糖値センサー、②血糖値センサーのための新規酵素開発、③健康マーカー測定用バイオセンサーチップ、④高速液体クロマトグラフィー電気化学分析法による、健康・疾患マーカーや健康食品中の有用成分の高感度測定、⑤血液透析装置の高機能化、⑥イオン液体を含む水溶液中での酵素反応による有用物質生産などです。
遺伝子を標的とした診断薬・医薬品を開発する!
ヒトゲノムDNAは通常二重らせん構造を形成しますが、近年の研究で部分的に「四重鎖」と呼ばれる特殊な構造を形成し、遺伝子の発現制御に関連していることが明らかになっています。本研究室では独自に開発した手法を用いて、ヒトゲノムDNA中で四重鎖構造が連続的に形成される領域「四重鎖クラスター」を網羅的に同定することに成功しました。この結果、約22,000個のヒト遺伝子の内、3,766個の遺伝子がこの四重鎖クラスターによって制御されていることが示唆されました。これら四重鎖クラスターと疾患との関係を解明すれば、遺伝子に直接作用する新たな医薬品の開発が可能になります。
微生物による有用物質高生産系とバイオセンサーの構築
生命機能応用研究室では、有用物質(薬効成分など生活に役立つ物質)の高生産を微生物で実現するため研究を行っています。微生物の物質生産能を効率的に引き出すため、培養系の最適化や代謝改変株の創生を行い、微生物の代謝反応を最大限利用した有用物質高生産系の構築を目指します。また、生体分子(タンパク質や核酸)や細胞、微生物が持つ優れた機能を利用し、病気の診断法や有用物質(医薬品や化粧品、食品素材等)の効率的な生産法の開発研究にも取り組んでいます。例えば、有用なタンパク質や微生物を自然界から同定・利用し、疾病診断用バイオセンサーや環境測定用バイオセンサーの開発研究を行っています。
ミトコンドリアを元気にして健康寿命を延ばす。
加齢や様々な病気の原因として活性酸素が注目されています。活性酸素は,わかりやすくいうと酸素が高い反応性を獲得した形のことで、活性酸素が生体内の脂質やタンパク質・核酸を傷つけてしまうことが加齢や病気に関係していると考えられています。細胞の中で活性酸素を主に産生するのが細胞内小器官であるミトコンドリアです。ミトコンドリアはエネルギー産生に重要な細胞内小器官ですが、加齢により、その数や質が低下してしまいます。当研究室では、活性酸素とミトコンドリアに注目して,健康寿命を延ばすための研究をおこなっています。本研究により、老化をとめたり、病気の発生を抑制する手掛かりを得たいと思います。