2022年工学部長メッセージ
「新しい時代の新しい教育」 山下 俊
受験生のみなさん、こんにちは。
みなさんが受験勉強の最後の仕上げに日々机に向かい勉学に励んでいる傍ら、世の中はめまぐるしく変化を遂げています。通信分野では昨年から5Gが普及し高速データ通信が可能になったほか、モビリティーシステムをリアルタイムで遠隔制御できるようになる等の技術革新も実現されました。ロケット打ち上げ技術も進歩し今年は民間人も宇宙に旅立ちました。大学生が人工衛星をつくり、技術を競うコンテストも行われています。自動車はこれまで「車はガソリンで走るもの」と考えられていましたが、温室効果ガス排出削減のために電気自動車への転換が進められ、欧州では2035年にハイブリッド車を含めて全てのガソリンを使用する車の販売ができなくなります。
このような工学技術の急速な進歩に伴い私達の暮らしは快適になる一方で、深刻な問題も予想されています。英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン博士は、これまで人間にしかできなかった仕事がロボットやAIなどに取って代わられる結果、多くの人が失業すると予想しています。
たとえば自動車の自動運転が可能になるとタクシーやトラックの運転手は仕事を失うことになります。回転寿司店のようにタブレット端末で注文できるレストランが増えるとウェイトレスなどの仕事もなくなります。ロボットの高性能化によって工場での製造や肉体労働の多くも仕事がなくなるでしょう。またこのようないわゆる単純労働だけではなく、AIの進歩によって知的労働の多くも人間を必要としなくなると考えられています。
そのような時代に皆さんが仕事を失うことなく生き生きと働き続けられるにはどうすればよいのでしょうか?それはコンピュータやAIにはできない高い次元のクリエイティブなスキルを身に着けることが必要です。では、そのようなスキルを身に着けるためにはどのような教育が必要なのでしょうか?もし皆さんがこれまでの教育のように教室で授業を聞いて多くの「知識」を身に着けるだけだとしたら、その「知識」の答えはすべて教科書に書かれています。それではコンピュータ―やAIにはとてもかないません。これからの新しい時代に勝ち残ることができる新しい教育は、学生が大学の外に出て、学生自らが課題を発見し、自らがその解決法を探り、自らが学ぶ教育が重要であると考えられています。
東京工科大学工学部では日本で初めて本格的なコーオプ教育を実践し、学生は大学での学びと並行して地域や企業での学びを通して問題解決力を身に着けてきました。また地域連携課題という講義では学生たちがグループワークにより近隣地域の課題を見出しその改善提案を行い、その成果は高く評価されています。大学での学びはこれまでみなさんが経験してきた学習とは異なり、最終的には答えのない問題に取り組み皆さん自身で工学的価値を創造する力を身に着けることにあります。
工学部では持続成長可能な社会を実現するための最先端の工学技術を学び、また、地域や社会と連携して課題発見を体験し、新しい時代に対応できるクリエイティビティ―を身に着けることができます。みなさんのこれからの人生の第一歩となる、楽しくわくわくとするような大学生活が皆さんをお待ちしております。
工学部長 山下俊