学長コラム第6回「変わる学び方 ――かつてと今の違い」
2022年9月30日掲出
みなさん、こんにちは。学長の大山です。今回は、かつての学び方と今の学び方の違いについて、取り上げてみましょう。
今、主流となっている学び方は、私が学生だった頃とは、ずいぶん違っています。例えば、小学校でのプログラミングの授業では、ブロックを積み上げるようにしてプログラミングを学べるようになっています。どう組み合わせると動くのか、どこが間違っていたから動かなかったのかということが見つけやすく、間違いを正せば思っていたように動かせたという経験を積むことができます。それにより、ひとつひとつ追究する力を身に付けられますし、何より楽しんで学習ができます。
かつてはそういうプログラミングツールはなかったので、小さなプログラムをひとつずつ作って、それを全体に組み合わせるという作り方をしていました。私が学生の頃は、小さなプログラムを組むために、使用するプログラム言語について、ある程度学ばないと、最初の一歩すら踏み出せない状況でした。それが今はツールを使って、ビジュアルで体験的に始められるのです。それは素晴らしいことですし、非常に便利な学習の仕方だと思います。
ただ、ひとつ心配に感じるのは、それがプログラミングを始める導入になるとしても、果たしてそこからより複雑なところまで辿り着けるのだろうかということです。例えば、SNSや金融情報のシステム、あるいは産業ロボットの多数のモーターを動かすシステム、センサだらけの車を処理して動かすといった複雑なシステムなどに繋がっていくのかどうか。おそらく、そのままでは繋がらないでしょう。大規模なシステムのプログラムでは、パーツとしての局所的な見方と全体としての大局的な見方を合わせる必要があります。ですから、どこかのステップでアルゴリズムや流れを考えるトレーニングをしたり、システムとして全体を考えて設計したりする学びが必要になると思います。
近年の英語学習も同様です。最初から文法ばかり教え込まれると嫌になるので、最近は会話から入り、まず単純なことが話せるようになってから文法の裏付けをするという流れです。大学の実験でも、まずは実験をしてみて、その後で理屈を考えるようになってきています。私が専門とする制御工学も同じで、私が習ったときは根本となる数学の原理やアプローチの仕方をひとつずつ学び、最後にロボットなどの実際のモノが出てきて、それまでに学んだことを適応させるという学び方でした。ですが、今は基礎や原理より、とにかくまずはロボットを動かしてみることから始めます。そんなふうに先に手を動かして、実感を伴って理解することは、大事なことです。
一方で、ここでも疑問に感じることがあります。先ほどの制御工学の例で言えば、まずロボットを動かして、そこで問題を見つけて解決する場合、解決するために必要となる基礎理論に下りて来ることはできますが、次にそれを別分野へ応用しようとすると、今度は発想を変えなければなりません。かつての学びは、下から上へと積み上げて学んでいく形だったため、それが容易でした。“基礎を学ぶ”と言われ“将来どんなところに応用できるのかな”と考えながら学んでいましたし、基礎をベースにいろいろな例題が出てくるという学び方だったからです。その場合、別の例題が出てきても、割と頭の中でフレキシブルに対応できます。しかし、最初からわかりやすい例題がある、つまり先に上の方を体験してから下を振り返るという学び方の場合、最初の印象が強い分、それを他に適応するという発想が生まれにくいのではないでしょうか。ロボットならロボットを動かすことが達成できれば満足で、そこで得た知識を別のモノに応用しようという発想に至らないというように。
こうした心配事を踏まえて、教育現場では上から下に降りてきて、次に下から上へと広げていく学び方をサポートする必要があるだろうと感じています。
今、みなさんは高校で、答えのある問題に答えを出す、あるいは決まっている答えを見つけるという学び方をしていると思います。それに対して、大学は「答えはひとつじゃない」という学び方になります。他の考え方もあると主張できるようになることが、大学の学びです。ですから大学時代は何にでも挑戦して、これまでに身に付けた考え方を次の考え方へとシフトさせる時期だと捉えてほしいですね。
今、主流となっている学び方は、私が学生だった頃とは、ずいぶん違っています。例えば、小学校でのプログラミングの授業では、ブロックを積み上げるようにしてプログラミングを学べるようになっています。どう組み合わせると動くのか、どこが間違っていたから動かなかったのかということが見つけやすく、間違いを正せば思っていたように動かせたという経験を積むことができます。それにより、ひとつひとつ追究する力を身に付けられますし、何より楽しんで学習ができます。
かつてはそういうプログラミングツールはなかったので、小さなプログラムをひとつずつ作って、それを全体に組み合わせるという作り方をしていました。私が学生の頃は、小さなプログラムを組むために、使用するプログラム言語について、ある程度学ばないと、最初の一歩すら踏み出せない状況でした。それが今はツールを使って、ビジュアルで体験的に始められるのです。それは素晴らしいことですし、非常に便利な学習の仕方だと思います。
ただ、ひとつ心配に感じるのは、それがプログラミングを始める導入になるとしても、果たしてそこからより複雑なところまで辿り着けるのだろうかということです。例えば、SNSや金融情報のシステム、あるいは産業ロボットの多数のモーターを動かすシステム、センサだらけの車を処理して動かすといった複雑なシステムなどに繋がっていくのかどうか。おそらく、そのままでは繋がらないでしょう。大規模なシステムのプログラムでは、パーツとしての局所的な見方と全体としての大局的な見方を合わせる必要があります。ですから、どこかのステップでアルゴリズムや流れを考えるトレーニングをしたり、システムとして全体を考えて設計したりする学びが必要になると思います。
近年の英語学習も同様です。最初から文法ばかり教え込まれると嫌になるので、最近は会話から入り、まず単純なことが話せるようになってから文法の裏付けをするという流れです。大学の実験でも、まずは実験をしてみて、その後で理屈を考えるようになってきています。私が専門とする制御工学も同じで、私が習ったときは根本となる数学の原理やアプローチの仕方をひとつずつ学び、最後にロボットなどの実際のモノが出てきて、それまでに学んだことを適応させるという学び方でした。ですが、今は基礎や原理より、とにかくまずはロボットを動かしてみることから始めます。そんなふうに先に手を動かして、実感を伴って理解することは、大事なことです。
一方で、ここでも疑問に感じることがあります。先ほどの制御工学の例で言えば、まずロボットを動かして、そこで問題を見つけて解決する場合、解決するために必要となる基礎理論に下りて来ることはできますが、次にそれを別分野へ応用しようとすると、今度は発想を変えなければなりません。かつての学びは、下から上へと積み上げて学んでいく形だったため、それが容易でした。“基礎を学ぶ”と言われ“将来どんなところに応用できるのかな”と考えながら学んでいましたし、基礎をベースにいろいろな例題が出てくるという学び方だったからです。その場合、別の例題が出てきても、割と頭の中でフレキシブルに対応できます。しかし、最初からわかりやすい例題がある、つまり先に上の方を体験してから下を振り返るという学び方の場合、最初の印象が強い分、それを他に適応するという発想が生まれにくいのではないでしょうか。ロボットならロボットを動かすことが達成できれば満足で、そこで得た知識を別のモノに応用しようという発想に至らないというように。
こうした心配事を踏まえて、教育現場では上から下に降りてきて、次に下から上へと広げていく学び方をサポートする必要があるだろうと感じています。
今、みなさんは高校で、答えのある問題に答えを出す、あるいは決まっている答えを見つけるという学び方をしていると思います。それに対して、大学は「答えはひとつじゃない」という学び方になります。他の考え方もあると主張できるようになることが、大学の学びです。ですから大学時代は何にでも挑戦して、これまでに身に付けた考え方を次の考え方へとシフトさせる時期だと捉えてほしいですね。