大山学長のホッとブレイク

東京工科大学 HOME> 大山学長のホッとブレイク> 学長コラム第3回「大学で何を学ぶべきか?――異なる意見を聞き、幅広い視点を身に付けよう」

学長コラム第3回「大学で何を学ぶべきか?――異なる意見を聞き、幅広い視点を身に付けよう」

2022年6月24日掲出

 みなさん、こんにちは。学長の大山です。今回は、大学の4年間でどんなことを学ぶと良いかということについて、お話ししましょう。テーマを挙げておいて、早速、こう言うのも何ですが、大学で「これを学べば将来、安泰!」というものはありません。逆に何を学んでも無駄になるものはないとも言えます。何より大事なことは、どんなことでもどれだけ真剣に考えたかということです。
 今の時代、一番難しいと感じるのは、情報があまりにも手に入れやすいことでしょう。日々、インターネットを介して、たくさんの情報が望む・望まないに関わらず、入ってきます。そうした情報に対してどう考えるかが、問われているのです。
 ここでみなさんにご紹介したいのが、クリティカルシンキング(検証的な思考)です。これは大学を卒業するまでに、ぜひとも身に付けてほしい力だと言えます。一旦は、ある意見や情報を受け入れますが、鵜吞みにするのではなく、違う考え方もあるかもしれないと、他の情報にもあたってみて、総合的に考えてみるということです。
 みなさんにも経験があるかもしれませんが、あるオンラインストアで一度何かを購入すると、次から“おすすめ商品”として購入履歴に関連した商品が次々に提案されることがありますよね。今はオンラインストアだけでなく、他のウェブサービスでもそういう仕組みが採用されていて、例えばユーザーの関心がありそうなニュースを集めてトップページに表示するといったシステムになっていることが多いです。それは一見、便利そうに見えますが、実は問題があります。自分の知りたい情報や心地良い情報だけが集まって来て、別の視点からの情報を見なくなってしまう恐れがあるのです。それは決して良いこととは言えません。自分の意見を持つことは大切ですが、それに対して他にどういう意見があるのかということを取り込み、視野を広げていかなければならないと思うからです。

 学問にも同じことが言えます。自分の専門領域で、ひとつの答えに行きついたとしても、別の専門領域の人が見たらどうなのかを考えることは重要です。例えば、私はロボットのモーターをいかにうまく動かし、思い通りの動きをさせるかということをメインに研究してきました。他方、生物分野の先生は、生き物がとても効率的な動きをしていて、ひとつひとつのモーターをどう動かすか指示を考えなくても、統合的に分散して動くシステムを持っていることを知っています。ロボットの勉強ばかりしていたら、なかなかそういう意見は出てきませんが、少し他の分野の人と話したり、他の専門の本を眺めたりすることで入ってくる情報です。こうしたことは、大学のすべての専門領域において言えることです。ですから、ひとつのことに集中して深く掘ることに加えて、それとは違う考え方やアプローチがあることも意識し、積極的に触れる力を培ってほしいと思います。

 とはいえ、自分の視点とは異なる、別の角度や別分野の視点で物事を捉えることは、そう簡単なことではありません。まずは、自分の専門をしっかり学ぶことでひとつの考え方の軸をつくり、一度、すべてのものをそれで測ってみるというのが最初のステップですからね。その次のステップとして、そこから離れて、別の視点で見直す時間が大事です。 大学時代は色々な分野の人と話ができ、自由なものの見方ができる時期ですから、そのチャンスを逃さないようにしてください。