大山学長のホッとブレイク

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学長メッセージ第6回「これからの教育の形②――オンライン学習と反転授業の可能性」

2020年11月27日掲出

  こんにちは、学長の大山です。前回は、新型コロナウイルス感染症の影響により、本学が遠隔授業と、感染予防対策をとりながらの実験・実習を組み合わせる形で授業を進めているという話をしました。今回は、この遠隔授業、あるいはeラーニングというものを私自身が考えるきっかけになったエピソードについてお話ししましょう。
  大きなきっかけとなったのは、1999年に、アメリカのイリノイ大学で、訪問研究員として1年間過ごしたことです。せっかく1年間勉強できるのだから自分の専門以外のことも学んでみようと、教育分野の授業をいくつか受講しました。その内のひとつが、eラーニング教育に関する科目だったのです。アメリカは国土が広いので、当時すでにeラーニングが一般的になりつつありました。その教育とはどういうものか、どう進めるのかということを専門の先生のもとでディスカッションしたり、そのクラスに参加させてもらったりしました。
  その時、イリノイ大学の先生がおっしゃっていたことは、今でも非常に印象深く残っています。ひとつは、「教育はスチューデントセンターだ」ということ。つまり学生が中心だということです。アメリカの大学も1980年代頃までは研究中心で、それを教育に広げるという形でしたが、90年代になってからは学生中心の教育が重要だという方向に変わってきていました。また、その先生がおっしゃった「教員は教える人ではなく、ファシリテーターだ」という言葉も印象的です。ファシリテーターとは日本語で世話人の意味です。つまり学生は自ら勉強し、教員はそれを世話する、いわばコーチみたいなものだと。
  今の遠隔学習もそうですが、結局、自分で勉強をしないとどうにもなりません。動画を視聴して学ぶオンデマンド型授業でもリアルタイムでやり取りする遠隔授業でも聞き流せばそれまでですから。そういう意味では、教室で行われる対面授業より厳しいかもしれません。教室では先生の指示に従えば済みますが、遠隔学習は自分から主体的に取り組まなければなりません。逆に教員も教え込むことというより学生がどう理解したか、それに応じて次のステップを用意することや考え方を個別に話すことが必要になります。
  また、学生同士がディスカッションする機会をつくることの重要性もイリノイ大学で教わったことのひとつです。聞きっぱなし考えっぱなしで終わるのではなく、学生同士が互いに勉強し合うことが教育として大事だ、eラーニングにもその仕組みがないとダメだと。その言葉が今もずっと心に残っていて、これからはこういう教育が主流になるのだろうと感じています。
  今後、大学で遠隔授業の経験を活かした教育をする際は、先ほど言ったスチューデントセンターの考え方と、教員はファシリテーター的な立場になるということが重要だと思っています。ただ、多くの教員はどちらかというとまだ教え込むというマインドが強いように思います。ですから教員自身も、これまでとは違う新しい教育方法を学ばなければなりません。実は本学では2年ほど前からその準備を始めていて、昨年、「先進教育支援センター」を立ち上げました。その目的は、変化の激しいIT技術に対応し、その使い方を教員にサポートすると同時に、それに沿った教え方を教育できるようにするというものです。今年はオンライン授業もあり、本学で使用しているラーニングマネージメントシステム「Moodle」のメンテナンスなどが主な業務になっていますが、今後はそこからITツールの使い方と教え方を教員にトレーニングする場へと広げていく予定です。
  今回のコロナ禍において、学生も教員も遠隔授業に慣れたとは思います。これからはさらに一歩踏み出して、学生は家で資料を見て予習をし、対面授業では教員というファシリテーターのもとディスカッションして学びを深めるといった反転授業的な形を本学の教育の理想としていきたいと思っています。